枡野浩一『結婚失格』を読む。

日記の見出しを書いて、文章中に鍵括弧の誤置(とでも言えばいいのか)があったことを思い出す*1。丁寧に文章を書き、それでいて丁寧に読み返す人という印象があるから不思議に思ったけど、まあ本人というよりこれは印刷の方のミスなのかもしれない。本人にゲラが回ってきて直しても直されていなかったくらいのミスは大手でもありうるのかも知れないしなあ。とか適当に思う。
書評小説、と銘打って「小説現代」で連載されたこの小説は、驚くほどドキュメンタリーであり、驚くほど書評が印象に残らない。後半部分の書評なんて存在自体疑う(必要か? じゃなく、あったっけ? の疑い)。枡野浩一の一ファンとして様々な知識を持って読んでいる自分には設定だけを変えて、より如実に突っ込んだエッセイとしかとれなかった。あとがきで諸々設定を変えたとは言ってはいるが。フィクションとノンフィクション、交えたらより小説として面白くなるかというと、この場合はドキュメンタリー性が増した気がする。現実を加工したドキュメンタリー番組ばかり見ているからだろうか、小説としては見れない自分がいる……。『あるきかたがただしくない』での話を、より突っ込んで聞けたから大変面白く読ませてもらったが。これを読まずに『結婚失格』を読んだ人の感想は、思いつかない。
そういえば、「いい部屋見つかっ短歌」のCMを見て興味を持った(んだっけ?)友人から、枡野氏の著作を貸してくれ、と頼まれていたので何から貸したものかと悩んでいたのだった。特に短歌に興味はない友人なので、詩集や短歌集というよりは、うまく文章と短歌が融合されている『淋しいのはお前だけじゃな』から渡すのがよいだろうと考えた。最短距離で『結婚失格』まで行くとするなら、それから『日本ゴロン』、『あるきかたがただしくない』を渡して『結婚失格』がよいと思った。何も読まずに結婚失格を読んだ人の反応も見てみたいが、いい反応が返ってきそうなのは、やはり『あるきかた−』を読んでから『結婚−』だと思う。
『結婚失格』を読んで笑ったところは、フリマのマナーをきちんと調べておく枡野さんがいつも通りの(必要かと思ってしまう)几帳面さなのに少し可愛かったところと、穂村弘氏の的確でいてわかりやすい「真夜中のロデオボーイ」だった。

結婚失格

結婚失格

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*1:」←この鍵括弧で締めるべき文章が』二重鍵括弧になっていたというもの